有給医のライフハック記録

医師の語る人生最適化戦略

医療現場の暴力リスクについて思うところ。

医療現場のリスクについて思う

つい先日(令和4年1月27日)、訪問医療・介護の現場で痛ましい事件が起きてしまいました。訪問介護されていた患者が亡くなり、そのご遺族が医療者の医療対応に不満を持ち、弔問に訪れたスタッフに発砲した、という。

ここまでのトラブルはかなり稀なケースだとは思いますが、それでも自分に無縁とも思えず、いろいろと考えるところがありました。

 

ターゲット層の選定がキモ

突然なですが読者様のなかで「村上ファンドに投資した人って、いらっしゃいますか? 投資市場で有名になった、村上世彰さんのファンド。

たぶん、いらっしゃらないと思います。というのも、あのような私募ファンドというのは出資者人数に上限があり、法律で499人までと決まっています。 人数が決まっていますから、大金を集めるには、相当の「上客」をターゲットにする必要がある。

事実、村上ファンドの出資者は大企業の社長、役員、銀行など、一口で1000万を軽く出せるような相手が「お客さん」でした。どうやってツテがあったのか、というと村上世彰さんの官僚時代にお付き合いがあったからです。まさかSNSなどでマス・マーケティングして捉えた人脈ではなく、かなり絞られた実地の優良顧客なのでした。

莫大な運用額で得られた利益を、出資者に還元し、村上さん本人も利益が得られると。まさに「少数の優良顧客を選定し、高値の商売をする」という展開でした。

 

保険医療と薄利多売のリスク

話を医療に戻します。

医療、とくに保険診療薄利多売な側面があります。公定価格が診療報酬として決まっており、その枠をはみ出るビジネスができません。利益を得たいのであれば、診察の回転を増やす必要があるのです。このあたりは、国の方針とも一致しています。

たくさんの方を診察するなかで、どうしても「そういう人」と面倒ごとになり、派手なトラブルになる可能性があるわけです。これは在宅医療にかかわらず、ほぼすべての診療科で生じうること。まして保険医療の場合ですと、悪い言い方ですが、事業者側が患者さんを「選定」できるものでもないのです。基本、診療を断ってはならない義務があるからです(応召義務という)。

そういう外部環境のなかで、今回のケースは決して偶発的なものではなくて、今後も全然起きうるケースなのかと思います。 実際問題として、病棟で看護師さんが殴られた、などはよく聞く話です。 今回ほどの激しい事件は別としても、小さいトラブルは日夜、生じているものなのです。

 

自費医療と高額設定

医療現場でも、収益構造が一般のビジネスに近い領域があります。そう、自費医療です。保険が利かず、患者さん本人の自己負担になる医療です。

美容皮膚科などがイメージしやすいと思います。のっけから値段設定が「フルコースで20万」とか、ローン前提の値段を提示されます。 当然、払える余裕のある方が対象になりますので、お金がないと文字通り「門前払い」されます。かなりドライです。

サービスの利用者は美容に興味のある方々ですし、それこそモデルさんとか女優さんの卵もいらっしゃいます。それなりに、バックのパトロンも強固なわけで、まさかいきなり殴ったりすることは少ないかと・・・。まあ、美容は美容でトラブルも多い(訴訟的な意味で)とは聞きますけれどね。

 

対策:距離を取ること

まあでも、ねえ。こういうことは、医療職に限らず、サービスの現場一般で起きうることなのかな、と。

 

医療を含む「B to C」あるいは「C to C」現場で発生しやすいとは想像ができますが、かといって企業間取引でも交渉窓口の相手が「そういう人」だと、全然派手な事件になりうると思うんですよね・・・。

 

なかなか、自衛の策というのも、難しかろうと。

 

先の話でいうと、美容皮膚科でもトラブルは当然起きるでしょうし。あまり医療現場でノーリスクなエリアも少ないと考えます。

 

 

ただ、まあ、普段から自分が気をつけていることがあって。やっぱり「距離を取る」ってことなんですわ。相手を思いやって丁寧に仕事するのは大事ですが、かといって自分の位置が分からなくなるほど相手の懐に入っちゃダメよって。医療職、とくに熱心な人に限って、「距離を取る」ことができず、グイグイいっちゃう傾向がありますので。いろんな人を見てきたうえでの私感ですけれど。「あ、これ、あかん人や」って思ったら、ちょっと引く。一人で対応しない。これ、すげー大事。

 

語郎