有給医のライフハック記録

医師の語る人生最適化戦略

【超高齢社会】救急医療のリアル【現場から】

たまには、硬派な話題を取り入れたいと思います。日本社会の未来を考え、どうやって個人として動くべきなのか。これは、非常に重要なテーマです。

 

救急医療を取り上げた映画やドラマは多いですよね。イケメン俳優たちが、死にかけた人を救う絵です。ですが、現実と乖離しているな、というのが実感です。医療的な描写についての完成度は、極めて高いと思います。ですが、本当にキモになる「重要な部分」が欠けています。

 

僕の病院は、やたらと救急車を受け入れます(都心部の病院は、どこも頑張って受け入れています)。そういった意味でも、現実的な話を記録できると思います。

 

 

・「超」高齢社会

もはや、ただの高齢「化」社会ではありません。

 

令和2年9月に総務省が、高齢者の人口比率を発表しています。それによりますと、高齢化率(総人口に対する65歳以上の人口比率)が28.7%でした。過去最高の数字です。高齢化率が21%を超えますと、定義上は「超高齢社会」となります。現在の日本は、「超高齢社会」なのです。

 

こういった国は、世界でも例を見ないのです。数値的にも、突出しております。ですので、「人口比率が高齢者に偏った今後の日本は、どうなってしまうんだ?」といった質問は、まったくナンセンスです。

 

前例がないので、わかりません。

 

 

 

 

・救急医療の現場の変化

現場にいますと、ほんとうにご高齢の方が多いと実感します。65歳なら若い方で、70代や80代の方も珍しくありません。病棟でも、外来でも、救急の現場でも、ご高齢者は多いです。

 

そういった環境にいますと、やはり「社会のひずみ」が嫌でも見えてきます。その「ひずみ」を生み出すメイン要因は、認知症関係の問題です。ご高齢になるほど、認知症リスクが高まります。究極的に、自分の身の周りのことが、行えなくなってきます。

 

ご高齢者のお子さんは、すでに社会に出て、独り立ちしています。そうなると、残されたご高齢者が、独居老人」や「老々介護」に至るわけです認知症をお持ちのご高齢者が、こういった状況ですと、いろいろと立ち行かなくなってきます。

 

あまり大っぴらに記載することではありませんが、「認知症のご高齢者が、家で腐っていた」ような事例も、経験があります。あるいは、認知症状態で徘徊してしまい、車にはねられたり。

 

これが現実なのです。

 

 

・救急の現場が、ソーシャルワークの現場に

独居で過ごされていたり、あるいは老々介護状態だったり。認知機能に問題があるうえで、この状況ですと、本当に大変なのです。

 

「体は治りました。さあ、帰りましょう」となっても、帰る環境が整っていない。無理に帰ってもらったとして、まともな生活などできず、同じような状況が再現される可能性が高いです。

 

そうなると、適切な高齢者施設や、長期入院できる病院を探すほか、ありません。ですが、そういった施設もすでにフル稼働しており、なかなか行き先が見つかりません。

 

実際の救急医療の現場は、ソーシャルワーク(社会環境調整)の場となっている側面が多分にあるのです。

 

こういったことが、リアルで、「重要な部分」だと痛感します。受け入れるのは、過酷かもしれませんが、目を背けてはならないのです。背けると、早晩に破綻します。

 

こういった事実は、確実に日本の経済や市場にも影響を与えます。どんどんマーケットが拡大してゆくような、社会ではないのではないか、と思ってしまいます。

 

すこしでもリアルを忘れないように、記録した次第です。

 

語郎