睡眠薬について、簡単に概説しようと思います。というのも、非常に身近な薬であるため、関心をもつ方が多いだろうと思ったからです。僕のまわりの人や親戚でも、使っている方がいます。そんなわけで、よく質問を受けるのです。
ネットで調べれば、いくらでも詳しい記述を閲覧できると思います。ただ、やはり内容が難しかったり、専門的すぎるきらいもあります。
僕が今までの上司に教わってきた説明や勉強した内容を、なるべく理解しやすく、噛み砕いて記録しようと思います。助長になるのは嫌なので、キモになるところだけ、まとめようと思います。
(※もし健康上の不安などがある場合には、医療機関の受診をおススメします。)
・睡眠薬の種類
文字どおりですが、睡眠薬は「眠れない人の、眠りを改善する薬」です。一口にこう言っても、たくさん種類があります。
現在の主流は以下の通りです。
●ベンゾジアゼピン系睡眠薬:ベンゾジアゼピン骨格をもつ睡眠薬
●非ベンゾジアゼピン系睡眠薬:ベンゾジアゼピン骨格をもたないが、作用が似る薬剤
●メラトニン受容体作動薬
●オレキシン受容体拮抗薬
と、まあ、いろいろあるわけです。それぞれについて掘り下げると助長になりますから、名称を列挙するだけにとどめます。
ただ、重要なポイントは、「ベンゾジアゼピン系睡眠薬」と「それ以外」に大別される、という概念だけです。それで十分です。実際のところ、現在でもよく処方されるのが、この「ベンゾジアゼピン系睡眠薬」ですね。効果がシャープなのです。
・依存、副作用、コワい薬???
「依存性があるの?なんかコワいイメージがあるし、副作用も気になる」という疑問があるかも知れません。昔からのイメージも、根強いのでしょう。きちんと用法容量を守れば、安全に使える薬ではあります。
副作用について、説明するときに分かりやすい例があります。ずばり「酒」です。じつは、アルコールが脳の中で結合する部分(受容体)は、ベンゾジアゼピン系薬剤のそれと、非常に近いのです。そのため、効果や副作用も似通っているのです。
「酒」を飲んだ時をイメージすれば、睡眠薬の作用についても、理解しやすいです。一般にお酒には、以下のような作用がありますよね。
●飲むと眠くなる ⇒ 催眠作用
●脱力する ⇒ 筋弛緩作用、抗痙攣作用
●気分が良くなる ⇒ 抗不安作用
●(長期でみると)依存性 ⇒ 離脱症状(俗にいう、禁断症状)
これらは、イメージしやすいですね。睡眠薬についても、多かれ少なかれ、こういった側面がどうしてもあるのです。つまり、「ベンゾジアゼピン系睡眠薬について、長期使用による依存性」は否定できません。短期集中して使用すべきなのです。
また、依存性だけではありません。力が抜ける(筋弛緩)作用があります。その作用の程度は、薬剤によってdetailが異なります。とくに、ご高齢者に出し過ぎると、ころんで骨折してしまったり、と悲惨なことになり得るのです。容量の見極めが、肝心なのですね。
・小話
実地でよくある、ちょっとした雑談です。さきほどの話を拡張して、ちょっと面白い話を記録します。
「お酒をよく飲む人が、入院したとして。病院では、当然お酒を飲めないわけだから、禁断症状が出て、ヤバい状態に突入するのでは?」と。
そうです、おっしゃる通り。お酒を常飲する人に対して、何の対応もしなければ、禁断症状に見舞われる可能性があります。もちろん、あっさり何もない場合もございますが、リスクヘッジすべきですよね。
勘が良い人は、お分かりかもしれませんが、「対応」すれば良いのです。
病院で「お酒」を出すのも手かも知れませんが、絵的にマズい。それでしたら、効果の似通った「ベンゾジアゼピン系薬剤」を少量だけ飲んでいただくのです。その対応を数日行ったのちに、ゆっくりと減らしていきます。内科系の医師は、よく実践しています。その対応で禁断症状の発生リスクは減るのですね。不思議。
語郎