有給医のライフハック記録

医師の語る人生最適化戦略

最近になって分かったコロナ対策現場の声

 

 

いろんな声

いろいろあって、今の病院に勤務するようになりました。新型コロナウイルス感染症の対応も、がっつり前線で行うような医療機関です。 僕のことは置いておいて、割と熱心に救急医療を頑張る若手医師が多い医療機関です。ですので「コロナの対応も勉強だと思って、頑張る人が多いのかも」と勝手に思い込んでいたところでした。

 

何というわけもない話なのですが。屋内の医局に、若手の医師が語らうフリースペースがあります。その傍に、のれんで区切られた変な空間があります。ちっこいソファーもあるので、そこに寝っ転がりながら、フリースペースの会話を聞くことができます。

 

カンファレンス(医師の会議)だと、みなさん「いい子ちゃん」になるので、本音が聞こえません。こういう雑踏のような空間での会話って、けっこう重要なのだと思います。こそこそ聞いている感じになっていますが、僕に悪意はないのです。勝手に聞こえるだけですから。

 

 

コロナ現場の裏側

寝っ転がって色んな人の会話を聞いていると、なかにはコロナの話題もあって。いくつかまとめようと思います。

 

コワいと思う医師も沢山いた

「コロナの診療を、勉強だと思って心から受け入れる医師」も居るにはいるのですが、やっぱり「ちょっと嫌だな。こわいな」と思いながら働く人も多かったようです。いままで張り切って働いていたと思われる知り合いの若手も、じつはメンタルにガタがきていたことを知りました。

 

こういった救急病院は、「若手の修行の場」的な位置づけなんですよね。んで、大抵の若手は医局や大きいグループの人事で動くことが殆ど。自分の意思とは無縁で異動するわけです。2020年だと、コロナの前線に意図せずに参入した人もいるわけですよね。しかも若手は「期限つきの常勤」であることが多くて、実質的には非常勤の派遣みたいな位置づけ。待遇も思っているよりは良くはなかったりで、不満もたまりやすいのでしょう。家庭を持っていると、もっと大変だと考えます。

 

やはり医療者といえど、人の子なのですよね。

 

 

ご家族への過酷な説明

COVIDによる重篤な肺炎が制御できず、思わしくない経過をたどる方もいます。特効薬がでると状況が変わると思いますが、現時点ですと厳しい状態の人もいらっしゃるわけで。

 

「手を尽くせる限界」という説明を医師側がするとき。ご家族は当然嘆くのですが、医師の側もストレスが相当強いシチュエーションになるわけです。医師サイドの目線では、この説明が精神的につらい場面とのことでした。そりゃ、説明中にご家族が目の前で号泣されたら、こたえるでしょうねぇ・・・。複数回経験したら、参ってしまう人がいるかも知れません。

 

こういった説明場面での悲しい状況というのも、あまり可視化されていない気がします。報道では、毎日やたら数字ばかりですのでね。

 

 

ICUなどでの勤務者

以下、あくまで僕の施設の話です。n=1ですので、それほど気にしないでください。すべてに当てはまるわけでもないですし、風の噂程度ですので。(でもこういう風の噂が地味に大事だったりします。)

 

新型コロナの対応をする部署に、希望で出向く人もいらっしゃいます。そのような意思をお持ちの方は、やっぱり「熱量」が強いわけです。多少つらくとも頑張る。耐性がある職員さんが多いようなのです。そのため2020年3月には、退職者が想定よりも少なく済んだ模様です。

 

でも意外に退職者が多かったのは、一般病棟や慢性期病棟のようでした。新型コロナの対応に最前線で追われることは少なくても、病棟で新規に感染者が発覚するケースもあるわけで。こうなると、院内感染の可能性も否定できないものですから、やっぱりストレスになるわけですね。この持続的なストレスで、メンタルが破綻してしまった看護師さんもいらっしゃいました。

 

 

雑感

医療従事者、とくに若手医師の本音というのは、あまり可視化されにくい内容です。「頑張って当然」という社会通念もありますので、弱音を吐けないのでしょう。だからたまにフリースペースで小さくこぼすのだと思います。

 

医師のなかには、「メンタルがきている」人も相当数いるものと推察されます。破綻しない程度に、メリハリをつけて働けると良いのですが。それが難しいのかもねぇ・・・。

 

 

語郎