美容医療が人気
最近の医師キャリアの傾向として、若手の美容医療への人気が高まっている。研修期間が終わってすぐに、大手美容クリニックに就職する知り合いが増えた。内科や外科などの保険科目には進まず、自費診療で腕を磨こうとする若手が増えているのである。
保険診療の科目から、自費診療へ転職する医師は意外と多いのだ。だが、逆は話題になりにくい。自費診療から保険科目へシフトチェンジした人の話が少ないのである。それには明確な理由がある。それにまつわる事項を記録しておく。
大学病院で聞いてみた。
以前から気になっていた話題であって、情報を取得しようと頑張っていた。ちょうど大学にいたため、思い切って上級医師に聞いてみようと思った。ディープな質問にも、気前よく答えて下さる医師である。「なぜ自費領域から保険診療へうつる人の話題が少ないのか。周りにめったに居ないし、謎である」と。
「まあ、そういう領域に行っちゃうと、ねえ」と歯切れの悪い答えだった。釈然としない気分になっていた。
後輩に聞いてみても、「ああ、行っちゃったなって感じです。戻れないでしょう」と言われた。やはり釈然としない。
美容外科だって、行ってみれば皮膚科と形成外科の親戚である。綺麗に治すことにコミット出来るのであれば、素晴らしい技術ではないか。むしろ市場価値は上がると思っていた。どうやら、そうは思わない人も大勢いるらしい。
なんだか、煙に巻かれた気分だった。
自費診療の説明会で聞いてみた。
どうにも答えが見つからず、悶々としていた。そんなとき、自費診療領域の説明会に行く機会があった。リクルート担当部門の方や、業界に詳しい紹介会社の方に直接質問できる場面に恵まれた。思い切ってぶつけてみた。
僕「どうにも、一度自費診療に行くと、保険科目に帰りにくいようで」
担当者「はあ・・・」
僕「それが、気になるのです」
担当者「ええ、なるほど」
僕「やはり、一部の保険科目の先生には”そういう目”で見られるのですか」
担当者「うーん。なくはないかも知れませんが。それよりも、もっとシビアな面が」
僕「???」
担当者「税金です。所得に応じて、翌年に税金って納めますよね。その都合です。」
僕「・・・」
担当者「自費領域だと、最低でも年収は2000万円近くのスタートになります。翌年の税金がスゴイことになる。突然、来年から保険科目に転職しようとすると、税金負担が重くなるのです。特に大学院生などになろうとすれば、年収は500万円くらい。確実に家計を圧迫するでしょう。そういう事情があります」
教訓
税金に関することが大きいのだ、と納得することができた。もちろん、全てが正しいとは言えない。すべてを鵜呑みにすべきではない。だが、はっきりと分かったことがある。
「だれに聞くか」で答えが全く変わる。あえて色々な立ち位置の方に、直接質問をぶつけることが、肝要だと思ったのだ。
語郎