有給医のライフハック記録

医師の語る人生最適化戦略

不妊治療が保険適用されそうな件。自費診療と保険診療について、考察。

 

 

不妊治療の保険診療化の流れ

個人的にビックリしたニュースがありました。高額な自費診療の代表格である不妊治療について、いよいよ保険適用の検討段階に入るそうです。早ければ来年から適用が進むとのこと。いきなり全ての不妊治療が保険診療入りするわけではなく、まずは体外受精と男性不妊の一部からの適用。今後は適用範囲が拡大されるかも知れません。

 

不妊治療はアホみたいに高く、以前から保険診療化を望む声が大きかったのです。ケースにもよりますが、数十万はザラで、なかには数百万に至る人もいたそうです。

 

 

保険診療化の患者さん側のメリット

金銭的負担の軽減

国の医療費で治療代の大部分がまかなわれるため、医療を受ける人の金銭的負担は軽くなります。

 

一定の効果

保険適用される理由は、治療効果についての医学的な証拠が十分だからです。一定の効果が保証されているため、無難に治療を受けることができます。

 

不平等感の是正

今まではお金が払えなくて治療を受けられない人もいたわけです。そういった意味での経済的な不平等感は無くなるでしょう。

 

 

自費診療時代の経営

自費診療としての不妊治療で儲けまくり、脱税するクリニックがありました。それで国税局に告発される事件がありましたよね。保険診療化で以前ほどのウハウハ時代は終焉するでしょう。

 

自費診療は医療機関の「言い値」で治療代が決まります。競合の医療機関が少ないと、どんなに高額でも自分らの料金設定で患者さんが受診されます。やりたい放題になる可能性がある(いずれは技術がコモデティ化されるために、価格の引き下げ合戦に至りますけど。詳しくは後述)。

 

ところが保険診療になると、国の一存で値段が一律に決まります。中央社会保険医療協議会という厚労省管轄の組織で議論され、診療報酬が決定されます。値段の決定には、もちろん「大人の力学」も関わりますが、まあ概ね医療機関に利益が乗り過ぎないように「調整」されます。保険診療になると、薄利多売になる傾向にあるんですよね。

 

 

関連するネタ

①美容皮膚科のケース

美容皮膚科などの美容医療領域については、未来永劫、保険医療になることはないでしょう。なぜなら、絶対的な「治療の正解」がないから。治療効果の判定が極めて主観的ですので、いわゆる医学研究に乗せにくい面があるでしょう。

 

あとは、単純にキリがないから。仮に、みんなが保険診療で気軽に美容整形を受けられるとします。みんなが顔をイジリまくり、国民の顔面偏差値が底上げされたとしても、そのなかで「背比べ」が起きてしまいます。美意識そのものを根本的に治療することは難しいのですよね。

 

コモデティ

美容皮膚科のレーザー治療とか、薄毛の薬とか。今より、もっと高かった時代がありました。しかし、当時と比べると、だいぶ安くなりました。「リーズナブルに美容を」みたいな広告、みたことありますでしょう。

 

自費診療なのに、何故安くなるのか? 

 

まさに、これこそ「コモデティ化」です。景気のよい自費診療のクリニックは、たいてい全国展開を始めます。チェーン店みたいに、同じブランド名で全国に散らばります。こうなると、まさに「規模の経済」です。技術にかかるコストを下げることができるわけ。

 

先に広まったクリニックの料金が、実質的な「相場の価格」になってしまい、後追いのクリニックも同じような値段にせざるを得なくなる、と。値段の吊り下げ合戦になるんですよね。まさに資本主義の競争です。

 

語郎