2021年12月の初旬、読んでみた書籍の紹介です。『論より詭弁』。タイトルには、日常生活で馴染みの薄い言葉が入っておりますが。
これが、なかなかの良著でした。
そこまで分厚い書籍ではありませんが、「弁論」や「詭弁」、「議論」といった深いテーマを扱っており、充実した内容です。
『論より詭弁~反論理的思考のすすめ~』
光文社、香西 秀信(著)
オススメ度:★★★★
レトリック、つまりは議論の相手をうまいこと丸め込み、説得させる技術がメインテーマです。ちなみにレトリックという言葉の意味は幅が広く、文章術的な意味もあるそうな。
ここ数年、こんな本ばかり読んでて、大丈夫か、自分・・・。
アリストテレスとか、およそ日常生活で耳にしない歴史上の哲学者の名前が唐突に出現しますが、例え話は身近な題材が多くて読みやすいです。
巷では「ロジカル・シンキング」がもてはやされ、論理的に考えることが生きていくうえで必須スキルのように語られております。
しかし、そもそも人間って、思っているよりも「論理的」に考えているわけじゃない、と気付かされる書籍でした。 例によってネタバレしないようにレビューします。
弁論術とか詭弁に興味があるのなら、ぜひ買って、読んでみてください。
あとは口喧嘩で強くなりたい人とか、SNSで日夜繰り広げられている下らない応酬に冷めちゃった人なんかにも、オススメです。
概要
そもそも議論って、、、
無意味。 議論なんて無意味。
その場で発言力がある奴が勝つから、です。
議論する前からパワーバランスで勝負は決まってて、そのなかで多少有利に話をすすめるために、論理力や詭弁が役立つ。
このように著者は主張されています。面白い考え方ですよね。
人類、みな詭弁つかい
自分や、自分の味方の発言には好意を示して支持するけれど、気に食わない人の発言には「詭弁だ」とか「論理的じゃない」などとヤジを飛ばしがち。
ポジショントークとも少し違うけれども、自分の主張に合うように皆話すわけで。
当たり前っちゃ、当たり前ですわね。
疑問文の怖さ
疑問文は、最高の攻撃方法です。 質問のなかに、いろいろねじ込めるから。
たとえば。
あなたが好きな漫画があるとします。
それを知っている僕が、
「あんな、つまらない漫画を読んどるんかい?」
って煽りかけてきたとします。
煽られたあなたが、
「いやいや、つまらなくないから!バカにしてるのか」
みたいに、ムキになって返しちゃうのは、NG。
こんな返答をしちゃうと、僕が次に畳みかけるための準備が完成しちゃいます。
じゃあ、意地悪な僕に、どうやって切り返す?
気になる人は、ぜひ読んでください。
行為者と、その行為の問題
たとえば、不祥事を起こしたタレントの作品が、お蔵入りになったり。
よくスキャンダルは芸能界でおきますよね。
ものすごく「論理的」な立場をとるなら、やっぱり「やらかした芸能人」と「作品」は別もの。
センター試験で、めちゃくちゃにマークしても、そこはきちんと採点されてしかるべきですし(機械的に添削されます。行為者の不誠実は判断されません)、「行為者」と「その行為」は別ものとして議論されるものです。
しかし。社会は「教科書的な論理」で回っているわけでもなくて、やっぱりそこは「常識」とか「倫理」が優先されて、やらかした本人は干され、作品もお釈迦になるわけで。
ほかにも実例はたくさんあげられますので、読んでみてください。
個人的見解
学会とかカンファレンスの場面で。
若手や中堅医師が、やいのやいのと騒いでいても、重鎮的なキャラが流れをブチ切り「シメのセリフ」を言って場が収まったことが多々あります。
こういうのを見ると、やはり会議とかディスカッションなどというのは、予定調和的に結論が決まっているから、アホくさいです。
だから、かったるいので、学会も行かないのですよね。
語郎