有給医のライフハック記録

医師の語る人生最適化戦略

質問:「2週間完全にロックダウンしたら、新型コロナの感染者は減るのか?」

 

Q&A的な

あまり医療ネタ(とくに新型コロナ関連)について、記録するつもりはなかったのです。最近はブログがネタ切れ気味でありますし、新型コロナ関係で質問を受けたりします。あくまで、僕の雑感として、書こうと思います。

 

 

質問

「新型コロナの感染力が強いとはいえ、人と人との接触が感染拡大に繋がっているわけでしょう。2週間完全にロックダウンしたら、新型コロナの感染者は減り、感染拡大は収束する? なぜロックダウンしないの?」。

 

 

(僕なりの)回答

・理論上は収束しそう

おっしゃる通り、完全にロックダウンを実現できたら、収束に向かうでしょうね。しかし「完全にロックダウン」というのは理論上であって、現実社会では適用できないのでは、というのが僕の考えです。

 

物理化学の世界ですと、物事を数式でとらえやすくするため、理想的にモデル化しますよね。たとえば「粒子の質量と体積はゼロ」にして物理公式を当てはめる、みたいな。まあ現実にはそんなことあり得ないわけで。

 

人と人との接触が完全にゼロになる、というのも無理があります。実際の人間社会では厳しかろう、と思うわけです。

 

・理論と現実の乖離を起こす要因 

エッセンシャル・ワーカー、すなわちライフランを担う職業の方は、コロナ禍といえども仕事をする必要があります。分かりやすいのが、それこそ医療関係者だったり、食料品を扱う職の人だったり。あるいは市民の安全を担う警察官や消防隊だったり。

 

コロナで重篤化した人を治療するのは医療関係者の役目でしょう。コロナでロックダウンをしたとしても、火事が起きれば消防隊はすっ飛んで消火して下さるでしょうし。ロックダウン中にも強盗する輩は発生するでしょうし、そういった不届き者を捉える警察の方が居ないと困ります。

 

感染経路

いくら皆が接触しないロックダウン状態と言いましても、現実には以下のような経路は容易に考えられます。

① 家庭内での感染

② エッセンシャル・ワーカーの職場での感染

完全に人と人との動きを遮断するのが難しいのです。現実には①と②で相互に感染を広げ合う恐れがあるわけです。そういった意味でも、非常に難しい。

 

事実かなり強固なロックダウンをかけたヨーロッパでも、家庭内の感染までは制御しきれないようでした。家庭内感染で万が一重篤化した人が運ばれるのは病院ですし、その搬送過程のエッセンシャル・ワーカーが感染して・・・、というように拡散するのでしょう。

 

あとは法律の面でも難しいのでしょうね、実際。そこまで営業活動を強固に遮断する権限はどこにあるのか、という議論になってしまいますからね。

 

落としどころとして今のような状況にあるのだ、と考えています。

 

語郎