人の呼称について、おもうこと
言葉のもつ力は強力です。常日頃から意識していると、いろいろと気づくことがあります。このあいだは「学ぶ」という言葉について思うところを記録しました。
いろんな人が行き交う場所で働いていると、自然と言葉に敏感になるようで。とくに「学ぶ」というのは、同期が連呼しているからこそ、気づくことができました。
今回は、「患者様」という言葉について、いろいろ見知ったところを記録しようと思います。
患者様という名称について
病院で「患者様」という言葉を聞いた方も、いらっしゃるかも知れません。ただ、なんとなく嚙み合わせが悪い言葉というか。そんな印象をお持ちでは?
「患者」と「様」という組み合わせ。「お客」と「様」の組み合わせを想起させるといいますか。なんとも歯切れが悪いと思うのは、僕だけでしょうか。
じつのところ、平成13年(2001年)に厚生労働省が、国内の病院に「可能なら患者様と言おうね」と指導したのが発端のようです。
違和感
病気に悩む個人に対して、「様」をつけるのは、何とも形容しがたい「むず痒さ」がありました。
厚生労働省としては、「医療者からの一方的な医療提供ではなくって、きちんと患者さんと向き合いましょう」というニュアンスだったのでしょうが。たしかに、横柄な態度の医療者は昔からいて、それはそれで考えものですから。医療者サイドに偏ったパワーバランスの適正化という意味では、この名称も悪くないと踏んだのでしょう。
とはいえ、「お客様」みたいな感覚というのも、それはそれで違和感がある。たしかに、医療はサービス業の側面が強いものですが、すべて患者さんの希望どおりに事が進む保証ができないからです。
世の中に「絶対」はない
世の中で、「絶対」はありえません。「絶対成功」とか、「絶対安全」とか。そんなものは、ない。 僕のなかで、常日頃から気にとめている原則です。
医療行為も、不確実な中で執り行われる行為ですから。当然ながら、予測の範疇を超えることもしばしばです。人体を完全にコントロールする術など、あるわけもなく。当然、「絶対安全、確実」はありえないのです。
クレームが増加?
「患者様」の名称が普及してから、(言い方は悪いですが)医療へのクレームの類が増えたそうです。
もちろん、サービスを受けるという意味では、患者さんも主張するべきところは主張すべきだと思います。ですが、やはり治療という技術のプラトーというか。不可抗力はあって。致し方ないこともあるのですよね。完全な「お客様」目線では、なかなか不確実性を受け入れることが難しいのかも知れません。
最近では、徐々に「患者様」表記を減らす施設も増えています。もともとが努力義務でしたので、べつに法的な強制力があったわけでもなく。
呼称がどうあれ、インフラサービスとしての医療が適正な形で分配されて欲しいものです。
語郎