有給医のライフハック記録

医師の語る人生最適化戦略

「専門医」の取得や維持制度に思うこと 。

 

 

当ブログの意義

グチといいますか。あんまりグチを含むような、政治的な主張は書きたくないのが本音ではあります。

 

ですが、これから医療界へ進むことを考えている受験生とか、そのご家族とか。あるいは、病院を含めた医療業界へ関心のある方だとか。そういった関心を多かれ少なかれ持っていらっしゃる方も、多いと思います。

 

せっかくweb時代で情報へのフリーアクセスが盛んなわけです。僕はオープンソースをモットーにしていますから、なるべく実態をお伝えできればと思います。

 

「専門医」関係のネタで大荒れ

最近になって医療界隈で騒がれているのが、専門医資格の取得・更新について。初期研修を終わった人が、自分の専門科目を修行し終わった証明みたいなものが、専門医資格です。

 

テレビとか雑誌にでる医者は「●●専門医」とか、何かしらの肩書を引っ提げて出てくるでしょう。あれです。あれの話です。

 

いままでは学会へ適当に参加していれば取れていたのですが、最近になって取得のハードルが上がっているのですよね。

 

たとえば、「取得」までのハードルはこのようなところ。

①一つの施設で研修しても、取得できない。必ず複数施設を回る。

②途中でのドロップアウトは、原則だめ。他の科目への変更も、現実的に難しい。

③レポートなどの義務化。

 

とまあ、ここまでなら許容範囲だと思います。ふつうに研修していれば、なんとか取れるレベル。

 

維持が難しくなった模様

問題は、ここからで。いざ取得しても、更新して維持」するためには、一定期間の医療過疎地域の勤務が必要になるようです。ほぼ確定路線だそうで。

 

「ついに、来るとこまできたな」 と。僕はそう思いました。

 

本来であれば、専門医資格といえども民間資格の範疇です。国家資格の枠にはなく、また法的な縛りもありません。運営している学会も公益社団法人・一般社団法人です。ようするに、完全な民間の組織です。

 

取得までもハードルが上がったのに、更新・維持にさらなる勤務地の制約を課されることに。

 

「もう初めっから取らなくて、いいや」という声もチラホラ聴かれています。

 

問題点

①ナイーブな話だが、(とくに)女性のライフステージに、壊滅的に適合していない。年齢的な意味で、出産や育児に少なからぬ影響を与える時期である。もちろん男性としても、頻繁な転勤は負担が強い。

 

②「学ぶ」意欲を駆り立てて、無給医の発生に寄与する可能性。

 

③取得しない人が増えて、きちんと技術の研鑚をしない人が増える可能性。

 

予感

うん。コロナで色々と医療システムについて言われていますが。

 

こういった「勤務地の縛り」の話が出てしまうあたり。なんというか、「公的システムとしての医療は、破綻寸前の状態にある」というのが現状の僕の考えです。

 

外から見るに破綻しているワケでも無さそうですが、内部にいると厳しい現状が見えてきます。

 

「何科が給料いい」だとか、「ポストの空きがある」とかで、はしゃぎやすいのが医者という人種です。ここまでくると、あまり何をチョイスしても大差がないのではないか、とも思います。

 

不謹慎な例えかもしれません。かつての富裕層が大金はたいて乗った豪華客席。なんの因果か船底に亀裂が入り、浸水してしまった。もう沈没を免れない事態に。その状況で、一番水に浸されるのが遅い「安全な部屋」をみんなで探し回る。 うすうす皆ヤバいと勘づいていながら。

 

そんな状況です。

 

結論

医療費や予算で、待遇が簡単に左右されてしまいます。下手したら無給になる。いまから医学部に進もうと考えている方は、真剣に道を考えた方がよい。保険診療だとマイナス・サム・ゲームの世界である。

 

10年前の僕に言えるとしたら、そう伝えたいと思います。

 

語郎