有給医のライフハック記録

医師の語る人生最適化戦略

あたらしく飲み始めた薬を、把握しておきましょう。実例から学ぶ。

たまには、「医学ネタ」を記録しようと思います。つい先日、とても興味深いケースがありました。僕の親戚におきた、検査に関する実話です。

 

なかなか、経験がないことでしたので、知識が増えました。もしかしたら、皆さんの身にも起きうる話ですし、周知しておこうと思った次第です。

 

長ったらしいのは嫌なので、まず結論を急ぎます。「あたらしく薬を飲み始めた場合、診察する医者に、その旨を漏らさず通達する」ようにしましょう、という話です。

 

 

・親戚の女性の相談

親戚の50代の叔母さんが、「検査値で異常が出てしまった。心配なので、意見を聞かせてほしい」と、僕のもとへ相談にいらっしゃいました。

 

近所の内科で診てもらうように促し、帰るように説明しました。しかし「どうしても、相談に乗って欲しい」というので、僕は応じることになります。

 

 

血液検査の項目異常だそうです。内容を聞いて、ちょっと慎重にならねば、と予感しました。「白血球・ヘモグロビン・血小板の項目について、意見を聞かせてほしい」と、叔母さんは言います。

 

結果を示すまえに、お見せする項目の正常範囲をお示しします。成人女性の正常値のマージンになります。覚える必要は皆無です。

 

白血球数  :3500~9000/μl

ヘモグロビン:Hb:女性で、12~16mg/dl

血小板   :15万~40万/μl

 

白血球は病原体に対して、殺傷する能力のある細胞です。ヘモグロビンは酸素の運搬に関連します。血小板は血を止める機能があります。それぞれの数値をみて、十分かどうかを判定するわけです。

 

 

・実際の項目

ご紹介しますが、個人を特定できないように、配慮しています。

 

分かりやすくするために、細かい数字は丸めています。また、お見せするのも全項目ではありません。一部だけです。単位も、見やすくするために省略します。

 

例年の検査   ⇒白血球数:3000、ヘモグロビン:13、血小板:16

今年8月の検査 ⇒白血球数:3000、ヘモグロビン:13、血小板:10

 

 

例年の検査で、白血球数がやや低いのが目にとまります。詳細を伺うと、生まれてこのかた、これくらいの数字だと。そのほか、特記すべき点は、ありませんでした。

 

今年8月の検査で、異常を指摘されたようです。たしかに、血小板が低下しています。明らかに落ち込んでおり、さすがに気になります。

 

「考えられる病気は、なにがあるの?」と、叔母さん、しきりに聞いてきます。これだけですと、全然絞りこめません。情報が少なすぎます。

 

「確定的なことは全く言えないが、特発性血小板減少性紫斑病(血小板が壊される病気)が疑わしい。そのほか、免疫疾患、血液疾患、も全否定できない。どの病気にも、当てはまる」とお伝えしました。さすがに、いつも明るい叔母さんも青ざめてしまいました。

 

実は、すでに検査した内科でも、僕の「見立て」と同じことを言われたようです。セカンドオピニオン代わりだったのでしょう。

 

 

・再検査の結果・・・

ただ、気になるのは、去年から「頭痛薬とコレステロールの治療薬」を始めていたようなのです。あまり、その点は詳しく把握していなかったみたいです。お薬手帳も、持っていませんでした。

 

「可能性の話として。万が一だが、お薬の可能性もある。まずは、お薬をもらったところに行って、再検査をするほうがいい」とお伝えしました。

 

結局、その薬たちを一時的に中断して、1カ月後に再検査となりました。

 

再検査の結果 ⇒ 白血球数:3000、ヘモグロビン:13、血小板:15

 

 

と、ものの1カ月の中断で、ベースに戻ったようです。主治医も驚いていたと聞きます。念のため、今後も定期的な採血は継続するようです。

 

 

・薬は、何が起きるか、分からん

これに尽きます。添付文書(薬の案内書)をみると、大量に副作用が記載されています。よくみると、説明文にも「頻度は低いが、血小板低下」とありました。

 

飲んでいる薬は、ただしく申告するのが無難でしょう。

 

 

語郎