有給医のライフハック記録

医師の語る人生最適化戦略

医療×AIの可能性。診療科目の今後と医者の責任。

 

 

AI時代

近年の情報技術の進歩は、すさまじい。サービスを利用していても、「AIが判定します」といった文言も目立つようになった。いよいよ、僕らの生活の一部に入ってきた感がある。

 

それに伴って、AIに関するビジネスが台頭している。ベンチャー企業や開発部門でも、ガチンコの研究闘争である。大学進学においても、情報系への進学を希望する学生が増えているそうだ。まさにAI時代である。

 

さて、今回は医療とAIについて、実際に見聞きした情報を提供して記録したい。

 

僕が初期研修を行った施設は、かなり研究に力をいれており、AIについても最先端だった。工学部と連携するようなガチンコ研究も多く、その点では情報が多いと思う。参考にしてくだされば、幸甚である。

 

 

 

皮膚科診療にAI進出!?

見出しどおりなのだが、皮膚科領域へのAI進出が期待されている。皮膚科の疾患は、「見た目で判断してなんぼ」の要素がある。

 

例えば、メラノーマ。メラニンを産生する細胞が悪性化した疾患であり、ホクロとの区別が重要である。この疾患も例に漏れず、「見た目」が大事なのである。

 

ホクロと違って、シミの周りがギザついていたり、色味がまだらだったり。ちょっとホクロと違う特徴がある。この特徴のある皮膚写真を、ビッグデータとして集積する。「これはメラノーマ、これはホクロ」といった具合に、AIが学習する。そして、精度を高めて診断能力を向上させるのである。

 

昨年になるが、ドイツでこのメラノーマを早期発見するAIアプリが開発された。その精度は、病理専門医を上回る診断能力だったという。

 

今後の草分け的存在になるだろう、と思っている。

 

 

 

病理科/放射線

病理科とは、顕微鏡で病変を観察して、最終診断をかける科目である。非常に重要な診断科目である。内科・外科を問わず、すべての科目の診断に影響を与えうる、横断的な役割がある。

 

放射線科は、画像検査装置を駆使して、病変を検出する専門科目である。こちらも科目横断的である。疾患の進展具合を判断するうえでも、非常に重要な役割である。

 

さて、これらの科目についても、同様である。「見た目」で判断することが多い性質上、やはりAIが進出しやすいといえる。

 

ただ、AIの診断能向上には、もっとたくさんのデータを集計する必要があるため、まだまだ未完成な部分が多いのが実情である。「すぐに実用化」とまではいかないだろう。

 

 

 

麻酔科

主に手術中の、生体管理を担う科目である。こちらは数値データや波形を大量に扱うため、やはりAI進出の余地がある。

 

僕が研修していたころ、仲の良かった麻酔科医に色々と実情を聞いてみた。アイデアとして「波形」を画像のように検出し、解析に応用するのは有効だろう、との事だった。実際、工学部と連携して研究する医師もいた。

 

ただ、パラメータ(心拍数・血圧・体温・麻酔深度)が多すぎて、解析がムズカシイようだ。すぐには完成しないだろう。

 

余談だが、麻酔科の小部屋に、AIで利用されるスクリプト言語pythonの書籍が並べられていた。僕が持っている本と同じものが陳列されており、感動した。

 

 

AIがあるから、医者は不要なの???

AIが、医者の診断精度を上回る「かも」しれない。だが万一、病気の診断をAIが「ミス」ったらどうなるのか。

 

AIは医師免許をもっていない。誤診が起きた場合には、誰が責任をとるのだろうか。

 

AI本体? 端末? 作ったメーカー? 

彼らを「医師法違反」で、しょっぴけるだろうか?

 

責任の所在を明らかにするために、やはり、そこは医者が責任をとるハズだ。すなわち、AIの診断結果を管理・監督する医師の存在は必須と考えている。

 

ちょっと前から、既に心電図では結果が自動判定されている。ただその結果も、「参考」にすべきであり、やはり自分の目でみるのが大切なのだ。

 

 

 

語郎