有給医のライフハック記録

医師の語る人生最適化戦略

身長の伸びるメカニズム。伸ばすには・・・。

 

 

・身長コンプレックス社会

身長について、コンプレックスを抱えている方は多いと思う。ネットや現実社会でも、身長をコンプレックスに感じて、自虐的な発言をする人もいる。とくに男性に関しては、深刻に悩んでいる方も多いようだ。

 

成人になってからグングン身長が伸びた、という例も聞かない。聞かない、というのは医学的な根拠があるからに他ならない。身長のメカニズムと、ちょっと最新治療についても触れて記録する。

 

 

 

・なぜ伸びる? 何歳まで伸びる?

さっそく。なぜ、身長が伸びるのだろうか。伸びるといっても、どこが伸びているのか。骨であると想像はつくだろう。

 

骨と言っても、べつに頭蓋骨がドンドン大きくなっているわけではない。子供と比べると頭蓋骨は大きくなっているだろうが、身長に関して寄与する影響は少ない。身長に大きく影響を与えるのは、「体の縦方向への伸び」である。それでいえば、例えば下腿の骨の伸びは、身長に大きく寄与するだろう。

 

思春期に大きく身長が伸びるのは、骨の末端部分にある「骨端線」という組織の影響による。ここが成長ホルモンの影響を受けて、伸びる方向へ骨を形成する基になる。このおかげでグングン伸びるのだ。

 

ただし体もバカじゃない。死ぬまで骨が伸びるとすれば、それはそれで悪影響も出てくる。そこで、ある程度の年齢になると、この部分が機能しなくなる。これを「骨端線」の閉鎖という。日本人の男性で17~18歳、女性でいえば16~17歳あたりとされる。20歳前には閉じてしまうのだ。

 

骨端線が閉じると、それ以降の身長の伸びは非常に緩くなる。大きく伸びることは期待できない。

 

 

 

・午前中に測ると、すこし伸びてる不思議

午前中に身長測定すると、すこし身長が高く記録された経験はないだろうか。それもそのはず、身長を規定するのは、骨だけではない。

 

背骨に関していえば、骨と骨の間に「椎間板」という組織がある。骨同士のクッションをする組織として重要だ。硬い骨と違い、「椎間板」はゲル状の組織。寝ている間に重力の影響をうけて、縦方向(背骨の連なる向き)へ伸びたのだろう。結果として身長が高くなったように記録される。

 

 

 

・それでも、伸ばすには・・・

確実に効果は約束できない。体に歪みがある場合には、それを是正すれば、いくらかの伸びは期待できるかもしれない。猫背が酷いと指摘された経験があれば、整体などで確認してもらうのも手だろう。

 

意識的に姿勢を正すようにすると、いくらか違うかもしれない。ただし、思春期のような劇的な伸びは期待できないと思われる。せいぜいが数cmの世界だろう。

 

 

 

・骨延長手術

あります。あるんです。これが。

 

一部の美容医療施設では、骨延長手術(イリザロフ法)がメニューとしてあるようだ。もちろん自費である。

 

「骨端線」が閉じたら、グングン伸びるのは期待できない。仕方のないことだ。

 

「それじゃーさ。骨を人工的に内部で切断して、ちょっと離して固定する。骨折だって自然と、くっつくじゃん。骨の自然延長力が発生して、切れた部分の骨が伸びて、くっつくはず。これを繰り返せばいーじゃん」といった手法である。末恐ろしい。本来は別の疾患用なのだが・・・。

 

当然、手術による感染症の可能性もあるだろうし、身体的に負担が大きい。自費なので経済的負担も、なかなかである。

 

医学で解決できないことも多い。できるとしても、多大な負担を対価として要求するものがある。

 

 

語郎