2021年11月の上旬に読了しました、ベストセラーの『スマホ脳』。ちょっと今更感がありますけれど、噂通りの名著でした。
本格的なネタバレは避けて、話のキモになる部分だけをかいつまんでみようと思います。
「何をやるにしてもスマホを手放せない」、「何かあると、ついSNSを見てしまう」という、スマホにドップリな人におススメです。そこまで来ていると、あなたも「ジャンキー」かも知れないですよ・・・。
『スマホ脳』(新潮新書)
新潮社 アンデシュ・ハンセン(著)、久山葉子(翻訳)
おススメ度:★★★
書籍名からお察しの通り、「スマホの依存性」を警告し、そこから脱するための行動変容を啓発するお話でした。
著者は現役の精神科医であり、「精神疾患とスマホ依存」という切り口から、この依存性の恐ろしさを語っています。実際に最近の学会でも、SNSと精神疾患という話題が出現しているようでして、どうもその界隈ではホットな話題のようですね。
書籍全体を通じて、科学的な考察がベースとなっているため、説得力は申し分ありません。 ありがちな「自己啓発チック」な書籍とは一線を画しており、一読の価値があるかと。
僕自身、これを機に、いろいろ見直そうという気になりました。
概要
おおまかな話のスジを紹介。
僕らのモチベーションは脳の報酬系が関わっていて、「期待を煽る状況」にドップリ漬かると、依存が形成されてしまう。
↓
元来、人間の脳は情報を欲する。もちろん生存のためである。そして、スマホは情報の濁流発生装置である。SNSではキラキラしたりマウント合戦をしている。
↓
知らず知らずのうちに情報デバイスへの依存が形成され、みんな「ジャンキー」みたいになって、健康面や精神面での弊害が生じている。
↓
皆で気をつけよう。
ザックリと論旨をまとめると、こんな感じです。
もっと詳しく知りたい人は、買うなり、借りるなりして、自分でしっかり読んでください。
補足
ここから下で、上記の内容を少し補足していきます。
脳の進化論
この書籍のなかで、一本通っている大きなロジックがあります。
「僕らの脳の報酬系は、大昔(石器時代とか)と比べても、根本的な部分は変わっていない」。つまり僕たちの脳ミソが駆動させる報酬系は変わっていないにもかかわらず、外部環境が激変したせいで、ありていに言えば「脳が追っついていない」と。
たとえば。大昔だったら食事にありつくのが難しく、一度ご飯を食べたら「もっと欲しい」という衝動を駆り立てることは生存戦略だった。いまの時代、ファーストフードが乱立しているこの時代でその衝動が暴走したら・・・。ご存じのとおり、糖尿病の方が激増するのも無理のない話なのです。人間本来の機能と、環境が乖離しすぎたのです。
スマホの弊害
まあ、いろいろとあるわけですが。
① 精神面の不調
② 身体面の不調
③ 発達過程の不調
④ 経済的、社会的な不調
こんな感じで、いろいろ紹介がなされています。くわしく知りたい人は、自分で読んでください。
とくにシェアしたいのは、この③です。幼いころにスマホに触れまくることの弊害が「示唆」され始めているようです。どうも、幼少期にタブレット端末のみで学習というのは、神経の成熟的にはよろしくないのではないか、という話題があります。ただし、まだ検証段階というか、具体的な影響が分かるのは10年、20年後かも分かりません。一応は、どう転ぶのか分からないという立場を取るのが賢明でしょう。
あと④も見逃せませんね。人がスマホとSNSでジャンキーになっている最中、そのデバイスを開発した人たちは儲かっているわけでして。SNSの開発者の真の目的は、あたりまえですが、広告収入ですよ。いいねを押しあっているあいだに、広告を刷り込ませて、その広告主から報酬をもらっているのです。よく考えても、やっぱりヤバい構図ですよね・・・。無料だからといって、まったく喜べなくなりますよね・・・。
個人的見解
全体を通じて、読みやすい書籍でした。
ただ、まあ、なんとなく「スマホ=悪」という構図にもっていきがちな感がありましたね。
こういう話題のときに出てきがちなのが、「ナイフは悪くない」ってやつ。
ナイフは食品をカットするために重要ですが、やりようによっては人を殺めることもある道具です。でも、「ナイフは悪だ。この世から消せ!」っていうのは、ちょっと違いますよね。使う人の問題ですから。ナイフ自体は悪くないです。「ナイフをこの世から消せ!」っていうのは、理が通っていません。
こうやって、デバイスだとかコンテンツに感情移入しすぎると、本質が見えて来なくなります。あまりデバイス自体に罪をかぶせるのは、違う気もしますけれどもね・・・。やるなら、開発者にセーブをかけさせたりだとか、法律規制するだとか。最終的には警察の権限になってくるのかな、とも思いますが。
ただ、せめて、歩きスマホは良くないんじゃないかしら、って思います。実際に電車に跳ねられた人も居ますしね。
あと、そもそもの話。ビジネスの商品開発っていうのは、多かれ少なかれ中毒者、ジャンキーを製造したら成功みたいな面があります。
たとえばお菓子とかね。食べ過ぎたら太るし、最悪糖尿病になるかも、って理屈では分かるけれども、なかなか禁ずることができない。これも広い意味では依存症です。
ジャンキーになるのは、何もデジタルデバイスとか酒だけじゃなくて、アナログにも危険なものが潜んでいるんでは、と痛感しました。
語郎