医学ネタっぽい話
時事ニュース的であり、まさに医学ネタという質問が今回のテーマです。まあぶっちゃけた話、正解が分かるわけもなく、あくまで個人的に考えているところを述べるにとどめます。
質問
「新型コロナウイルスの起源って、どこからなのだろうか? 人工的に作られたものなのか、あるいは自然発生でも起きうるのか」。
なるほど。新型コロナウイルスの起源について、関心を持っていらっしゃるようでした。
(僕なりの)回答
分かりません。より正確に言えば、「判断するに足る材料が出そろっていないため、回答しかねる」。
まあ、ねえ。現時点で正解が分かるわけでもありません。ただこの手の議論が盛り上がるのには、それなりの理由があったりしますよね。仮に「人工的」であったと結論すれば、当然ながら製造した組織を叩こうというモチベーションになりますからね。「自然発生」と結論づけるよりは、叩く対象があるほうが便利なわけで。
感情論を抜きにして、ウイルスの自然発生や突然変異についての事例を挙げます。
ウイルスの変異
実際の問題として。ウイルスが自然界の環境において変異することって、フツーにありうる話なんですよね。
人間の遺伝情報の本態はDNAで、実際にタンパク質を合成するのに使われるのがRNA。
じつはウイルスも、それぞれ個別にDNA型・RNA型と分類されるんですよね。有名なヘルペスウイルスなんていうのはDNA型ウイルスで、インフルエンザウイルスやコロナウイルスはRNA型ウイルスの代表例なんです。
DNAは2本の遺伝情報の鎖で出来ていますが、RNAは1本の鎖です。2本の鎖のほうが構造的に安定しますが、1本の鎖であるRNA型ウイルスはそもそも変異しやすいのです。
インフルエンザウイルスの例
冬場を中心に、ヒトで流行が恐れられているインフルエンザ。あまり知られていませんが、インフルエンザっていうのは「哺乳類・鳥類」で広まっている感染症なんですよね。人間だけに広まるウイルスではありません。
元はカモ等の水鳥が、インフルエンザウイルスを保有していています。不思議なことに、カモには無害なのです。カモの体内にウイルスが居座り、増殖の場となります。増殖したウイルスは、カモの排泄物を介して他の生物に移る機会を得ます。移り先の生物としては、豚だったり鶏だったり。
それでもって、移った先の生物を、ここでは仮に豚としましょう。いままで豚の間で主流だったインフルエンザウイルスに、カモから来たインフルエンザウイルスがドッキングすることがあるんですよね。ゴチャゴチャとミックスされて豚の間でも全く新種のインフルエンザウイルスが完成してしまい、運悪くヒトにも感染の親和性があるとパンデミックになります。
このようなルートっていうのは、完全に自然的です。もちろん養鶏場だとか養豚場だとか、そういった「人間が立ち上げた環境」がトリガーにはなりうるのですが。
他の事例
MERS(マーズ)っていう感染症の原因ウイルス(MERSコロナウイルス)は、ラクダから検出されることがあります。意外でしょ、ラクダ。
今回の新型コロナウイルスは、コウモリやセンザンコウ説が濃厚です。もっとも、まだ完全に確定したわけではありませんし、今後より詳細に分かると思います。
余談ですけれど、コウモリって、ややこしい感染症を媒介するケースが多いんですよね。狂犬病も媒介するみたいで。くわしくは謎。
まとめ
結局のところ、水かけ論になってしまうんですよね。
念頭に入れたいのは、動物が感染拡大に寄与している感染症が、存在しているという事実。そういった意味では、自然界ルートを完全に除外して無視するのは難しいんじゃないか、って考えます。ルートを追っかけるにも限界がありますものね。
語郎