昔からアニメは見るほうだった。鬼のように沢山鑑賞するわけではないが、主要な作品は知っているつもりである。なかでも、幼少期から見続けてきた作品の一つが青山剛昌先生原作の『名探偵コナン』である。大好きな作品である。
僕が小学生の頃は、夕方19時台に放送されており、夕食をとりながら鑑賞していた。「日本のアニメといったら、名探偵コナン!!!」、くらいの勢い。
犯人がコナンによって、突き止められる。最初はコナンの推理に反論しつつも、次第に反論できずに受け入れる犯人。その課程が、「人が死・病気の事実を受け入れる課程」でよく知られる理論と極めて類似しているのだ。
衝撃的な知らせを受けたとき、人間がとる心理的プロセスを、一般化したモデルがある。「キューブラー=ロスの受容プロセス」である。以下1~5の順番に課程をとる。
- 否認・・・事実を受け入れられず、否認する。
- 怒り・・・怒りを周囲の人物にぶつける。
- 取引・・・取引をして、苦痛から逃れようとする。
- 抑うつ・・・気力がわかなくなる。
- 受容・・・事実を受け入れる。
すべての方がこの課程をとおるわけではない。1、2ときて5となる方もいるだろうし、4まできて終わる方もいるだろう。あくまでも、理論上の話である。
だいたい、犯人(男性ver)は次のような流れで発言をすることが多い。
犯人「毛利さん、勘弁してくださいよー。ははは。僕が犯人?やだなぁ、もおー」
⇒最初は否定する。「毛利さん」と呼んだり。わりとフランクに絡む。なんとなく語尾が伸び調である。
↓
犯人「ふざけるな!!名探偵じゃないよ、とんだヘボ探偵だ!!!あんたは!!!」
⇒怒る。「ヘボ探偵」や「あんた」と言ったり、暴言が目立つ。語調も強い。
↓
犯人「証拠がないじゃないか。物的証拠を出せよ!」
⇒冷静さを取り戻し、証拠を要求し始める。潔白を取引しようとする。
↓
犯人「・・・・・・・(絶句)」
⇒反論の余地もない証拠が出現してしまう。あきらめかかっている。言葉も発せず、抑うつ。
↓
犯人「・・・そうだよ。やったのは俺だ。あいつが、全部悪いんだよ・・・」
⇒悟りの境地に至る。自分の口で詳しい動機を語る。まさに受容。
と、無理矢理まとめてみた。程度の差こそあれ、この流れが多いと思う。この順番があって、いろいろ推理と攻防戦が生きてくる。
アニメの構成上、いきなり受容して「僕がやりました」となっても、コナンが困る。そんな受け入れが良い犯人は、逆に困る。ちょっと反抗したりするから、心理戦が発生して面白いのだ。
こんな細かい受容プロセスが織り込まれている。さすが、日本の名アニメだ。
語郎