2021年9月に読んだ一冊をご紹介。少し前に話題になった名著を読んでみました。これが、なかなかの傑作だと思います。気になった人はぜひ読んでみてくださいな。
『サードドアー精神的資産のふやし方』
東洋経済新報社 アレックス バナヤン (著)、 大田黒 奉之 (翻訳)
おススメ度:★★★★★
タイトルからして自己啓発感が漂っていますが、いざ読んでみると、なかなか面白いのです。ネタバレしない範囲で紹介します。
概要
なんちゃってインフルエンサーとかじゃなくて、ガチの有名人、それこそビル・ゲイツとかマーク・ザッカーバーグとか、そういった世界的な成功者の「最初のキャリアの一歩目」って、あまり語られないもので。
そういった「成功者の第一歩の秘訣」を求めて、著者が有名人を相手に突撃インタビューを試みる話です。
著者は大学の医学部生でしたが、これといって実績はなく、当然ながらアポを取ろうとするたびにマネージャー的な人に断られまくります。そういった苦い経験をするなかで、いわゆるコネを使った裏口的な手法、サードドアを見出し少しずつ取材をすることに成功する。取材をするうちに、行動力を身につけて成長していく。そんな話です。実話なのがスゴイです。
途中で大学を辞めようとしたり、めちゃくちゃにメールを送信しまくったり、いきなり飛行機に乗って外国に飛んだり。ハタから見れば血迷っている感じが、また面白いです。
サードドアとは
先ほども書いたとおり、成功への裏口的な手法のこと。サードというからには、ファーストとセカンドがあります。
著者は成功することを、会員制のナイトクラブに入ることに例えています。なかに入る(成功)ためには3つのルートがあり、それぞれニュアンスが変わってきます。
ファーストドア
大勢の人が選ぶやり方。いうなれば正攻法ですが、成就するまでに時間がかかるデメリットがあります。
セカンドドア
セレブとか、名家の出身だとか。あらかじめ世渡りする上で有利な人たちが選べる道です。まあVIPってところですかね。今の日本風にいえば上級国民ってところですな。
サードドア
上のどちらでもない道です。なんというか、表現しにくいのですが、裏口的なやり方のイメージ。たとえば、内部につながっている人に、プライベートな方法で接近してコネをゲットしたり。正攻法ではないけれども、うまく進めばすんなり入れるルートです。
成功者の共通点
いろんな有名人が登場します。彼らのエピソードとか、かっこいい人生観を詳しく知りたい人は、本書を読んでいただくと良いでしょう。ここでは各論は割愛します。
書籍の途中で著者にアドバイスをくれる人たちが沢山現れますが、彼らもサードドアを使って有名人と接近してきました。というか、有名人自身もちゃっかりサードドアを使っていることが判明したり。
またサードドアを使う以前の問題として、いわゆる「ハッタリ」をかまして自分を盛って大きく見せたりとかね。すごい泥臭くて好きでした。
個人的見解
何を汲みとるのか、読む人によって変わってくる名著です。 分厚いのですが、小説調なので読みやすいです。
いろいろ常識はずれなことを著者がやらかすので、ハラハラしてしまうのですが。一点だけ気をつけるとすれば、彼、めちゃくちゃ頭いいんですよね。読んでいると単純にヤバい学生だと思ってしまいますが、アメリカの名門、南カリフォルニア大学の医学部過程ですからね。
学力的な意味では、たいていの日本人より余裕で頭がいいハズです。すごく利口な人が、全力でぶつかっても失敗しちゃうことがあるし、成功することもある。こう考えたほうが無難です。
最後に。私事ではありますが、けっこう身近にもサードドアってあるな、と。僕らの界隈でいえば、たとえば学会の後の懇親会とか。すごい有名な学者とかも、こじんまりとした懇親会に参加することがあって。その道のプロがゾロゾロと参加していたこともあり、今思えば立派なサードドアだったな、って思えます。普通にアポっても、まず断られるでしょうけれど、オフな場面で知り合うとまた違ってくるものなんでしょうね。
語郎