有給医のライフハック記録

医師の語る人生最適化戦略

災害から時間が経っておこる健康被害について

 

 

建物倒壊と健康障害

本来であれば、先月の今頃に記録するのがよかったのですが、最近思い返したので遅ればせながら記録します。

 

建物の倒壊と隠された健康障害、という話題です。なかなか困った健康被害なのにも関わらず、あまり周知されていないことが分かり、記録に至りました。

 

 

震災による倒壊後・・・

3.11の地震被害において、建物の倒壊や津波被害は当然ながらよく知られたことです。建物自体が衝撃で破損しますし、津波がくれば家の土台から流されてしまいます。

 

直接的で短期的な被害として、たとえば瓦礫で怪我をしてしまうことは思いつきやすいです。あるいは、浸水で誤嚥の恐れもあり危険です。

 

ここで取り上げたいのは、もっと長期的な健康被害のことです。すぐには発病しませんので、あまりイメージがし難いのです。

 

結論を先に。建築物倒壊によるアスベスト散布と悪性胸膜中皮腫です。

 

 

アスベストの被害

聞いたことがあるかも知れません。このアスベスト、随分と前に大問題になり、建物を作る際に使用されなくなりました。天然の鉱物のアスベストですが、チリが細かすぎるために人間の呼吸器の奥に入り込んでしまいます。一度吸い込んでしまうと排出しにくく、人体にとどまってしまうのです。そこで長期的に化学反応をきたし、病変をもたらす可能性があります。

 

最近はアスベストが使用されることはありませんが、禁止される前の建築物には一般的に使用されております。今ある建物の中で使われているケースも、もちろんあるのです。「吹き付け」といって建物の構造物の補強や保温に使用されることも。ほかにも沢山あるようですが、僕は建物の専門家ではありませんのでここら辺にしておきます。

 

さて普段は問題ありませんが、いざアスベストを含む建物を解体するときに問題になります。 解体するときに細かいアスベスト線維が「舞って」しまうのです。

 

 

どこで吸ったのか分からないケースも・・・

アスベストを吸引しても、すべての人が病気になるわけではありません。一部の方が悪性胸膜中皮腫というガンの一種を発症してしまいます。切除しか根治が難しく、さらに再発もしやすい厄介なガンです。しかも曝露してから10年とか、だいぶ経過してから生じるのが問題なのですよね。 曝露した本人もどこで吸引したのか分からない。因果関係も証明しにくく、問題が大きいのです。

  

たとえば、震災後に瓦礫の山で撤去作業を行っていたとします。そうなると、本人としては無自覚でも、「場合によっては」古い体育館などの作業ではアスベスト線維を吸引している「可能性」があるのです。すべて仮定の話ですが、実際に起こり得るのです。阪神淡路大震災でも、アスベストが関連すると思われる健康被害が報告されています。

 

なぜ僕が冒頭のような断りをしたのか。察しの良い読者様ならお分かりかも知れません。そうです。東日本大震災から10年が経つので、ぼちぼち建物倒壊に関する疾患の報告が散発する「かも」知れません。絶対ではありません。これを機に、いまいちど瓦礫や撤去作業と健康障害を認識すべきと思っています。

 

 

まとめ

まだまだ未知の病気ですし、発症のメカニズムも不明。一応、警戒する意義があると思うので、記録した次第です。

 

語郎